聴覚障害のある親の子育て 親の語り
約50名の聞こえないお父さまとお母さまに、「子ども(コーダ)が行う通訳」というテーマをもとに、1時間程度のインタビューをさせていただきました。高校生以上の聞こえる子どもがいらっしゃる、お父さま、お母さまです。
お父さま、お母さまもまた、自分とは違う“聞こえる”子どもの子育てに悩みながら、それでも、たくましく奮闘しながら日々をあゆんでいらっしゃいました。苦しくもあり、楽しくもあった子育てについて語ってくださった内容を、ごく簡単にご紹介します。
コーダの児童期・青年期(~23歳頃まで)を振り返って
【子どもの通訳を頼る】
子どもの通訳は当然
「子どもに通訳を頼むのは、自然でしたね。悪いとは思いませんでした。自然の会話の中で、お願いっていう感じでした。」(Aさん、60歳代)
子どもに通訳をやむを得ず頼む
「子どもには、申し訳ないけどお願いって言って頼むこともありました。本当は、自分のことは自分でやりたいですけれども、どうしても困ることは、やむを得ずお願いしていました。」(Bさん、40歳代)
子どもの通訳を喜ぶ
「子どもは、だんだん成長して、中学3年生の三者面談のときは自分で通訳もしたんですよ。
立派に通訳をやってくれて、とっても嬉しかったです。」(Cさん、60歳代)
【聞こえる子どもを育てる難しさ】
子どもの話す言葉がわからない
「手話は、子どもには通じませんから。私は声を出しますので、子どもには伝わっていると思います。でも子どもの言う事は、私には半分くらいしか、わかりません。何度も聞き返すと、嫌がって、もう話してくれなくなりました。」(Dさん、60歳代)
障害と手話の抵抗への戸惑い
「子どもは、学校の授業参観に、手話通訳をつけていくことを嫌がりましたね。それから、声を止めてって言われました。それは、仕方ないと思いました。娘の気持ちを尊重して、諦めました。」(Eさん、40歳代)
聞こえる子どもと自分とは違う、という意識
「長女は面倒を見て育てました。でも、下の子は、長女がいたから。私たちはろう者だから、健聴者とは違うからって、健聴の長女に下の子の面倒を任せたんです。下の子は、すっかり姉だけを頼るようになりました。」(Fさん、40歳代)
【前向きな子育て】
聞こえない親を恥じないよう伝える
「子どもに聞こえないことを申し訳なく思っていたら、進まない。自分が聞こえないことを、ちゃんと子どもに説明する。その積み重ねです。」(Gさん、40歳代)
周囲の人々の支え
「頼りにしたのは保育園ですね。実家の両親は離れて生活していますから、それよりは、身近な保育園が頼りになりました。毎日日誌に、いっぱいいっぱい書いて伝えたり。」(Hさん、50歳代)
コーダの成人期(24歳頃~)のこと
【子どもの自立による自身の成長】
子育ての振り返りと反省
「家族で外出すると、子どもが自分の責任だと思って通訳をしてくれていました。その時はとても頼りにしていたのですが、今思えば、子どもには過剰な負担をかけていたと反省しているところです。」(Iさん、70歳代)
子どもの通訳を頼らない
「今は、子どもに通訳をお願いしても、公的派遣を頼めって言われます。自分で出来ることは、出来るだけ自分でしようと思うようになりました。」(Jさん、60歳代)